災害時に広がるデマ:正しい情報を見つけるための基礎知識
災害時の「もしも」に備える:デマに惑わされないために
地震や台風といった災害が発生すると、私たちの生活は一変し、不安と混乱に包まれます。そのような状況では、正確な情報が命を守るために非常に重要になります。しかし残念ながら、災害時には間違った情報、つまり「デマ」も広がりやすくなります。
「助けて」といった救助を求める声や、避難場所に関する誤った情報、あるいは不安を煽るような噂話などが、インターネットやSNSを通じて瞬く間に拡散されることがあります。これらのデマに惑わされてしまうと、安全な避難が遅れたり、不必要な混乱を招いたりする危険性があります。
このコラムでは、災害時にどのようなデマが広がりやすいのか、そしてそれらをどのように見分け、正しい情報に基づいて行動すれば良いのか、その基礎的な知識と心構えについてお話しします。
災害時に広がりやすいデマの例
災害時のデマには、いくつかのパターンが見られます。身近な例をいくつかご紹介しましょう。
- 誤った救助要請や安否情報: 「〇〇さんの家が倒壊しました、助けてください」といった情報が、実際には発生していない場所や古い情報であるにも関わらず拡散されることがあります。また、安否不明者の情報が、すでに確認済みであるにも関わらず広がり続けるケースもあります。
- 不正確な被害状況や予言: 「この地域は津波が来る」「〇〇が爆発した」といった、根拠のない情報や大げさな被害状況が伝えられることがあります。中には、不安を煽るような災害の予言なども見られます。
- 特定の物資やサービスの提供に関する嘘: 「〇〇を無料配布します」「特別な救助隊が来ます」といった、実際には存在しない物資やサービスの提供を語る情報が流れることもあります。これは、人々が困っている状況につけ込む悪質なデマです。
- 動物に関する誤情報: 「動物園から猛獣が逃げた」「特定の動物が危険な状態にある」といった、動物に関するデマも過去に拡散されたことがあります。これらは不必要な恐怖心を引き起こす可能性があります。
これらのデマは、善意で拡散されることもあれば、悪意を持って流されることもあります。どちらにしても、結果として混乱を招き、本当に必要な情報が届きにくくなる原因となります。
デマを見分けるための「立ち止まる習慣」
では、私たちはどのようにしてデマを見分け、正しい情報にたどり着けば良いのでしょうか。大切なのは、届いた情報をすぐに信じたり、誰かに伝えたりする前に「立ち止まって考える」習慣を持つことです。
1. 情報源を必ず確認する
- 誰が言っている情報ですか? 一番重要なのは、その情報が「誰から」発信されたものなのかを確認することです。政府機関(内閣府、気象庁)、地方自治体、警察、消防、電力会社、ガス会社、そして信頼できる大手メディア(テレビ、新聞、ラジオ)など、公式で信頼できる情報源からの情報に注目しましょう。
- 「〇〇が言っていた」や「LINEで回ってきた」は要注意 「友達の友達が言っていた」「LINEで知り合いから送られてきた」といった情報は、情報源が不明確で、途中で内容が変わっている可能性があります。 (詳細は図1「信頼できる情報源の例」をご覧ください)
2. 内容を冷静に吟味する
- 感情的・煽るような表現はありませんか? 「いますぐ拡散してください」「大変なことになります」といった、人の不安や焦りを煽るような表現が使われている場合は、一度疑ってみることが大切です。正確な情報は、落ち着いた事実に基づいて伝えられることがほとんどです。
- 具体的な日時や場所が曖昧ではありませんか? 「どこかの地域で」「いつか」といった曖昧な表現ではなく、具体的な日時や場所が示されているかを確認しましょう。古い情報や、すでに解決済みの情報が再拡散されていることもあります。
- 複数の情報源で確認できますか? 一つの情報源だけでなく、信頼できる他の情報源でも同じ情報が伝えられているかを確認しましょう。テレビ、ラジオ、新聞、スマートフォンの公式アプリなど、複数の方法で確認する習慣を持つと良いでしょう。
3. 不安な時は一人で抱え込まず相談する
もし、受け取った情報が正しいのか分からず不安になった場合は、無理に一人で判断しようとせず、家族や信頼できる友人、近所の方など、身近な人に相談してみましょう。話すことで、冷静に情報を判断できることがあります。
災害時の正しい情報の探し方
災害時に正しい情報を見つけるためには、日頃から公式な情報源を知っておくことが大切です。
- テレビ・ラジオ: 災害時は、テレビやラジオが最も基本的な情報源となります。特にラジオは、停電時でも電池で使えるため、防災用品の一つとして準備しておくと安心です。
- 地方自治体のウェブサイトや防災アプリ: お住まいの市町村のウェブサイトや、公式の防災アプリには、避難所の開設状況や被害状況、支援情報などが随時更新されます。スマートフォンの設定で、地域の防災情報を通知する設定にしておくのも良い方法です。
- 気象庁のウェブサイト: 地震や津波、気象に関する正確な情報は、気象庁のウェブサイトで確認できます。
(動画でも、公式情報の見つけ方について詳しく解説しています。)
まとめ:落ち着いて、確かな情報に基づいて行動する
災害は、いつ私たちの身に降りかかるか分かりません。そのような「もしも」の時に、デマに惑わされず、落ち着いて行動するためには、日頃からの心構えが大切です。
- 届いた情報をすぐに信じず、一度立ち止まって「本当かな?」と考える。
- 情報源が信頼できるかを確認する。
- 複数の方法で情報を確認する。
これらの小さな習慣が、あなた自身や大切な人の命を守ることに繋がります。私たちは皆、災害時に助け合いたいという気持ちを持っています。だからこそ、その善意がデマの拡散に利用されないよう、一人ひとりが情報を受け取る際に少し注意を払うことが、災害に強い社会を作る第一歩となります。